技能実習は、日本で学んだ技能を母国で活かし、国際協力の一環として活用することを目的としています。実習生は受け入れ企業で実践的なスキルを習得しますが、現場では彼らが安価な労働力として扱われることが指摘される場合もあります。そのため、近年では制度の適正な運用を目指し、監督体制の強化が進められ、不当な扱いを防ぐための取り組みが行われています。

目次
技能実習の対象となる分野とは?
技能実習の対象となる分野は、主に日本の産業を支える多岐にわたる業種に及び、2023年時点で74職種、146作業が対象となっています。この制度により、年間およそ30万人を超える技能実習生が日本国内で実習を行っています。外国人技能実習生が特定の職種・作業において技能を習得し、母国でその経験を活かすことを目的としており、法令で対象分野や職種が具体的に定められています。以下は、主要な対象分野の具体例です。
- 製造業
- 農業・林業
- 建設業
- 介護
- 水産業
- その他の分野:繊維業、機械器具製造業、電気・電子機器関連、食品サービス業、ホテル業など多岐にわたる職種が対象となっています。これらの分野では、技能や技術の伝承だけでなく、現場での実務経験を通じて、業務効率化や新しい技術の応用方法を習得することができます。
技能実習1号と2号、3号の違い
技能実習生が取得する在留資格は大きく分けて3種類に分けられます。「技能実習1号」、「技能実習2号」、「技能実習3号」です。
項目 | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 |
---|---|---|---|
概要 | 初期段階で、基礎的な技能を習得する期間 | 1号修了後、2年間の高度な技能習得の期間 | 2号修了後、さらに高度な技能を学ぶ段階 |
期間 | 1年間 | 2年間 | 最長2年間 |
目的 | 日本の職場文化への適応と基礎技能の習得 | 専門的な技能を現場で習得すること | 高度な技能習得とリーダーシップの発揮 |
要件 | 初めて日本で技能実習を行うこと | 1号修了し、所定の試験に合格していること | 2号修了し、一定の技能検定合格が必要 |
終了要件 | 技能検定基礎級試験合格 | – | – |
役割 | 基礎的なスキルを習得し、日本文化に慣れる | 実務での専門性を高め、業務に貢献する | 高度な技能を発揮し、現場での指導的役割 |
技能実習生を受け入れる企業の条件3つ
技能実習生を受け入れるためには、企業が一定の条件を満たす必要があります。主な条件は以下の通りです:
- 技能実習計画の作成 – 実習生が習得する技能や目標、具体的な実習内容を含む計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)の認定を受ける必要があります。
- 労働法や技能実習法の遵守 – 労働時間、最低賃金、適切な休暇の提供を含む労働条件の整備が必要です。違反が発覚した場合、指導や制裁措置が取られる可能性があります。
- 適切な生活環境の提供 – 住居の確保や生活サポートの提供が求められ、特に清潔で安全な環境の整備が必要です。
さらに、受け入れ企業は技能実習生の生活や健康管理の支援を行い、定期的な面談を通じて心身の状態を把握することも求められます。指導担当者を設けることで、技能指導だけでなく日常の悩みを聞き、解決を図る姿勢が重要です。
①技能実習計画を作成し、認定を受ける
技能実習計画には、受け入れる業務内容や指導の流れを詳細に記載しなければなりません。実習計画は、外国人技能実習機構(OTIT)による厳格な審査を受け、認定を取得します。申請の際には、具体的なスキル目標、指導者の役割、指導時間、進捗評価の方法などを明確にする必要があります。実習生に指導する内容が実際の業務内容と一致しない、または明確な指導計画がない場合には、認定が下りないことがあります。
- 技能実習生の情報
- 受け入れ企業や監理団体の情報
- 実習の目的および目標
- 具体的な実習内容
- 指導体制の詳細
- 進捗評価の方法
- 労働条件や生活支援
実際のポイント
- 実習内容が単純労働でないこと: 技能実習は単なる労働ではなく、技能を習得することが目的であるため、単純な反復作業のみで構成されている計画は認められません。
- 実習生の指導体制の整備: 実習生に対して十分な指導ができる体制を整えることが求められます。
②企業内での技能実習生の指導と労働条件の設定
企業が技能実習生を受け入れる際には、労働基準法を遵守し、適切な労働条件を設定しなければなりません。労働時間や賃金をしっかり管理し、過酷な労働環境を避けるよう配慮する必要があります。技能指導については、担当者が中心となり、計画的にスキルを習得させることを目指します。また、指導者は業務以外でも生活のサポートを行い、実習生が日本での生活を充実させられるようサポートしなければなりません。
技能実習生の労働条件は、日本の労働基準法などの関連法令に基づいて適切に設定されるべきです。技能実習制度においては、技能習得を目的とした実習である一方、労働者としての権利がしっかり保護されることも重要です。
主な労働条件の概要
- 労働時間:
- 一般的に、技能実習生も日本の労働基準法に基づく労働時間の規定が適用されます。通常の労働時間は1日8時間、週40時間が原則となります。法定の労働時間を超えて労働を行わせる場合は、残業手当が支払われる必要があります。
- 休憩時間と休日:
- 1日の労働時間が6時間を超える場合には最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩を与えることが義務付けられています。また、週1回の休日を確保するか、4週間で4回以上の休日を確保することが求められます。
- 賃金:
- 技能実習生に支払われる賃金は、最低賃金法に基づき、地域ごとの最低賃金以上である必要があります。賃金は現金または振り込みで支払われ、適切な労働時間分の賃金や割増賃金(残業、休日労働、深夜労働に対する加算分)が支給される必要があります。
- 残業や割増賃金:
- 残業(時間外労働)を行う場合は、25%以上の割増賃金が支払われなければなりません。休日労働や深夜労働にも、それぞれの条件に応じた割増賃金が適用されます。
- 有給休暇:
- 労働基準法に基づき、技能実習生も一定期間継続して勤務した場合に有給休暇を取得する権利があります。入社後6か月継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤している場合、10日間の年次有給休暇が付与されます。
- 社会保険への加入:
- 技能実習生は、日本の社会保険制度(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)に加入する義務があります。これにより、病気やケガに対する医療費の補助や、年金の積立などが保障されます。
- 労働条件通知書の交付:
- 受け入れ企業は、技能実習生と雇用契約を結ぶ際に、労働条件を明示した労働条件通知書を交付する必要があります。通知書には、勤務時間、賃金、休暇、職務内容などが記載され、技能実習生が契約条件をしっかり理解できるよう説明されなければなりません。
③生活環境の整備
技能実習生を受け入れる際には、まず住まいの確保や生活環境の整備を行うことが大切です。日本人と同じように住まいは清潔で安全であることが必要で、生活に必要なものを揃えたり、公共交通機関へのアクセスを考慮することも大事です。また、言葉の壁を乗り越えるために日本語の学習や異文化理解のための研修を行うことも効果的です。
1. 住居の提供
- 清潔で安全な住居の確保: 技能実習生が住む住居は、清潔で快適かつ安全であることが求められます。住宅設備やインフラが整っており、基本的な生活に必要な設備が整っていることが理想です。
- 適切な空間と居住人数の管理: 一部の技能実習生が過密な住居に住まされるケースが問題視されています。受け入れ企業は、適切な居住人数を確保し、実習生が快適に生活できるスペースを提供する必要があります。
2. 生活支援
- 言語サポートの提供: 実習生の多くは日本語が母国語ではありません。受け入れ企業は、日本語の基礎を教えるサポートや日本語教室の案内を行うことで、実習生が日常生活をよりスムーズに送ることができるように支援します。
- 異文化理解の促進: 日本の文化や習慣に慣れるためのオリエンテーションや、異文化交流を促進する活動を通じて、実習生が新しい環境に適応できるよう支援することも重要です。
3. 健康管理と安全対策
- 定期健康診断の実施: 受け入れ企業は、技能実習生に対して定期的な健康診断を行い、健康状態を把握するよう努めることが求められます。
- 医療機関との連携: 技能実習生が病気やケガをした場合にすぐに医療を受けられるよう、近隣の医療機関と連携し、適切な対応が取れる体制を整えることが大切です。
4. 生活必需品の提供
- 家具や家電の備え付け: 実習生が日常生活で必要な家具や家電を用意することが求められます。ベッド、冷蔵庫、洗濯機、調理器具など、基本的な生活を営むための備品が整っていることが重要です。
- 公共交通の利便性の確保: 実習生が職場に通勤する際、公共交通機関を利用する場合には、その利便性を考慮した住居の選定も重要です。通勤が困難な場所に住まわせることは避けるべきです。
5. 生活指導
- ルールやマナーの説明: 日本で生活する上での一般的なルールやマナー(ゴミの分別、公共施設の利用方法など)について、技能実習生にわかりやすく説明することが求められます。
- トラブル対応窓口の設置: 実習生が生活や職場での問題について相談できる窓口を設けることが重要です。相談窓口があることで、問題の早期発見と解決が期待できます。
6. 安全な環境の確保
- 防犯対策の徹底: 実習生が生活する住居の防犯対策を行い、外部からの侵入や危険な状況を防ぐことが重要です。夜間の出入りの管理や防犯設備の導入など、安全性を高める取り組みが求められます。
- 災害時の対応: 日本は地震や台風などの自然災害が発生しやすい地域もあります。実習生に対して、避難場所の案内や災害発生時の対応方法を事前に教えることが重要です。また、防災グッズの提供や訓練の実施も行うと良いでしょう。
7. 精神的なサポート
- メンタルケアの提供: 異国の地での生活は精神的な負担がかかる場合もあります。受け入れ企業は、実習生がストレスや悩みを抱えた際に相談できる体制を整え、必要に応じて専門のカウンセリングサービスを紹介することも有効です。
企業単独型と団体管理型(監理団体型)の違いと特徴
技能実習制度には、技能実習生を受け入れる形態として「企業単独型」と「団体管理型(監理団体型)」の2つの方式があります。それぞれの特徴や要件について詳しく説明します。
企業単独型
企業単独型は、海外に関連会社や取引先がある日本の企業が、直接技能実習生を受け入れる形態を指します。この方式では、送り出し機関と直接連携し、技能実習生を日本国内で育成することができます。企業単独型は、海外の関連会社や協力企業に直接指導し、技術移転を行うことを目的としています。なお全体からすると割合は少なめになります。
- 直接的な受け入れであるため、企業が技能実習生の育成計画を直接策定し、運営します。
- 受け入れる企業の規模や能力が重視され、技能実習生の指導体制の整備が求められます。
- 海外の関連企業との結びつきが強い場合に、効果的に活用される形態です。
条件:
- 企業が実習生に対して十分な技能指導を行える体制を整えていること。
- 技能実習計画の認定を受け、監督官庁に必要な報告を行うこと。
団体管理型(監理団体型)
監理団体は、技能実習制度を適切に運営するために認可を受けた団体で、事業協同組合や商工会などが該当します。監理団体は、受け入れ企業に代わって技能実習生の管理を支援し、実習の適正な運営を確保します。
- 監理団体が、送り出し機関との連携や書類の準備、実習生の生活支援を行うため、企業は監理団体の支援を受けて受け入れを進めることができます。
- 実習生に対する指導や生活サポートなど、受け入れ企業と監理団体の連携が求められます。
- 監理団体は、法令の遵守や実習生の適切な待遇を確保するために、定期的な監査を行い、問題があれば指導や是正を行います。
条件:
- 監理団体は国から認可を受けた機関であることが条件です。監理団体は、法令を遵守しながら技能実習生の受け入れをサポートし、企業に対しても指導を行います。
- 企業は、監理団体と契約し、技能実習計画を作成し、認定を受けることが必要です。
よくある質問
申請取次行政書士として、皆さまのよくあるご質問に丁寧にお答えいたします。
技能実習制度の目的は何ですか?
技能実習制度の目的は、発展途上国への技能移転を通じて国際協力を推進することです。技能実習生は日本で習得した技術を母国で活かすことが期待されています。
技能実習の期間はどのくらいですか?
一般的には3年間ですが、一定の条件を満たせば最大5年まで延長可能です。
技能実習生として働ける年齢制限はありますか?
特定の年齢制限は設けられていませんが、送り出し国の法律や送り出し機関の要件に従う必要があります。
技能実習生は家族を日本に帯同できますか?
原則として、技能実習生は家族を帯同することはできません。ただし、特例が認められる場合もあります。
技能実習中に別の会社に転職することは可能ですか?
原則として転職は認められていません。ただし、受け入れ機関の不適切な運営があった場合などには例外として可能です。
技能実習中に別の会社に転職することは可能ですか?
原則として転職は認められていません。ただし、受け入れ機関の不適切な運営があった場合などには例外として可能です。
技能実習生は資格外活動(アルバイト)を行うことができますか?
原則として資格外活動は認められていません。違反が発覚した場合、退去強制の対象となる可能性があります。

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